日々の業務で多くの企業が直面するのが、ファイル共有に関する課題です。たとえば、社内で利用しているファイルサーバーがすぐに容量オーバーになる、USBメモリの紛失リスクが心配、メール添付では容量不足でファイルが送れないといった問題が挙げられます。
さらに、取引先とのやり取りでは、ファイル送信のたびにパスワード付きの圧縮ファイルを作成する手間や、セキュリティリスクへの懸念も多く聞かれます。
こうした課題を放置していると、業務効率が下がるだけでなく、情報漏洩やデータ紛失といった重大なトラブルにつながる可能性もあります。
本記事では、これらの問題を解決し、社内外で効率的かつ安全にファイルを共有するための具体的な方法やツールを紹介します。
これにより、ファイル管理の負担を減らし、業務全体の効率化を目指しましょう。
目次
よくあるファイル共有の方法と課題
ファイル共有にはさまざまな方法がありますが、それぞれにメリットとデメリットが存在します。以下では、社内および社外でよく使われる方法とその課題を整理します。
社内とのファイル共有
USBメモリ
USBメモリは、安価で手軽に利用できるため、多くの企業で使用されています。ただし、紛失や盗難による情報漏洩リスクが高く、容量にも限界があります。特に、複数人でのファイル管理には向いていません。
ファイルサーバー
社内ネットワーク上での共有に適した方法で、ある程度のセキュリティも確保できます。ただし、容量管理やメンテナンスの手間が発生し、老朽化したサーバーの更新には多大なコストがかかる場合があります。
NAS(ネットワークアタッチトストレージ)
NASは、コストパフォーマンスに優れ、外部からのアクセスも可能な柔軟なソリューションです。しかし、初期設定や運用には専門知識が必要で、トラブルが発生した際には迅速な対応が求められます。
オンラインストレージ
インターネット接続さえあれば、どこからでも利用可能なオンラインストレージは、リモートワークが増える現代に最適です。ただし、セキュリティ設定を怠ると情報漏洩のリスクがあるため、適切な運用が重要です。
社外とのファイル共有
パスワード付きzipファイルをメールでやり取り
セキュリティを意識した方法ではありますが、パスワードの共有に別の手段が必要なため手間がかかります。さらに、パスワード漏洩のリスクもあるため、安全性は必ずしも高くありません。
ファイル転送サービス
大容量ファイルを簡単に送信できる便利な手段ですが、リンクの有効期限が切れると再送が必要になるなど、継続的なやり取りには適していません。また、無料サービスではセキュリティが十分でない場合があります。
オンラインストレージ
共有リンクを使うことで、リアルタイムでのファイル共有が可能になります。ただし、アクセス権限の管理を誤ると、情報が第三者に漏れる可能性があります。
共通の課題
ファイル共有の方法にかかわらず、共通して存在する課題がいくつかあります。最も大きな課題はセキュリティリスクです。USBメモリの紛失やオンラインストレージの設定ミスによる情報漏洩、さらにはメール誤送信など、さまざまな形でリスクが潜んでいます。
また、大容量ファイルを扱う際に容量不足や転送速度の問題が発生することも多く、特に継続的なやり取りが必要なプロジェクトでは大きな障害となります。
これらの課題を解決するためには、自社に合った適切なツールの選定と、効率的かつ安全に運用できる体制の構築が重要です。

ファイル共有に活用できるオンラインサービスの紹介
ファイル共有に関する課題を効率的に解決するには、適切なオンラインサービスの活用が鍵となります。以下では、オンラインストレージ、ファイル転送サービス・メールセキュリティサービス、そしてチャットツールの3つのカテゴリに分けて、それぞれの特長と利用例を解説します。
オンラインストレージ
オンラインストレージは、インターネットを介してデータを保存し、共有できるクラウド型のサービスです。どこからでもアクセス可能で、社内外での効率的な情報共有を実現します。
Googleドライブ
特徴:Googleアカウントさえあれば、無料で15GBまで利用可能。ドキュメントやスプレッドシートなどの共同編集が可能で、リアルタイムでのコラボレーションに適しています。
利用例:プロジェクト資料や仕様書の管理、複数人での共同編集が必要な場合に便利です。アクセス権限を設定することで、セキュリティも確保できます。
Box
特徴:エンタープライズ向けのセキュリティ機能が充実しており、大規模なチームでも効率的に利用可能です。バージョン管理や詳細なアクセス権限設定が強みです。
利用例:機密情報や顧客データの安全な共有に最適です。特に規模の大きなプロジェクトや、データ保護が求められる業務で活躍します。
どちらも、ファイルのバージョン管理やバックアップ機能を備えており、災害時のデータ保護にも対応しています。
ファイル転送サービス・メールセキュリティサービス
オンラインストレージが継続的なデータ共有に適している一方、ファイル転送サービスやメールセキュリティサービスは、大容量ファイルの一時的な共有や安全なメール送信に特化しています。
Bizストレージファイルシェア
特徴:大容量のファイルを簡単かつ安全に送信できるサービス。ダウンロード期限やパスワードを設定することで、セキュリティを確保します。
利用例:製品の設計図や技術資料など、大きなファイルを取引先に送る際に便利です。特に、頻繁にデータ送信が発生する業務で重宝します。
ActiveGate SS
特徴:メール添付ファイルのセキュリティを強化し、ウイルススキャンや暗号化機能を提供。安心してファイルを送信できる環境を整えます。
利用例:取引先への定期的なメール連絡で、重要な資料を添付する際に利用されます。メールの誤送信リスクを軽減できる点が魅力です。
これらのサービスは、ファイル共有の一時的なニーズを満たしながら、安全性を確保するために適しています。
チャットツール
チャットツールは、メッセージのやり取りだけでなく、ファイル共有やプロジェクト管理にも対応しており、チーム全体の効率化に寄与します。
Microsoft Teams
特徴:チャット、ビデオ会議、ファイル共有が一体化したツール。Microsoft 365とのシームレスな統合により、ドキュメントの共同編集やプロジェクトの進行管理がスムーズに行えます。
利用例:チーム内のコミュニケーションや、リモートワーク時のプロジェクト進行に最適。部門を超えた連携にも対応します。
Slack
特徴:メッセージベースでのコミュニケーションが中心ですが、ファイル共有や外部ツールとの統合が豊富で、柔軟性の高い運用が可能です。
利用例:部門間での情報共有や、軽快なやり取りが求められる業務に適しています。カスタマイズ性が高いため、特定の業務プロセスに合わせて最適化できます。
これらのツールは、単なるファイル共有にとどまらず、チーム全体の生産性向上に寄与します。
これらのオンラインサービスを活用することで、業務の効率化だけでなく、セキュリティや柔軟性の向上も期待できます。

社内外とのオンラインサービスを利用したファイル共有の実践例と導入のステップ
オンラインサービスを活用したファイル共有は、社内外の業務効率を大きく向上させる可能性を秘めています。ここでは、具体的な活用事例と導入のステップを紹介します。
実践ケース
社内での活用例
- 部門間の図面共有
製造業において、設計図や技術資料を複数の部門で共有することは日常的な業務です。オンラインストレージを利用すれば、最新のデータをリアルタイムで全員が確認できるため、誤ったバージョンを使用するリスクを減らせます。また、アクセス権限を設定することで、部門ごとに必要な情報だけを共有し、セキュリティを強化できます。
- 案件情報の共有
顧客ごと、案件ごとの資料や案件の進捗状況をチャットツールやグループウェア(チャット、ミーティング、ファイル共有などが一体となったコミュニケーションツール)上で一元管理することで、関係者全員が常に最新情報にアクセスできます。これにより、情報の行き違いや管理ミスを防ぎ、案件の進行がスムーズになります。
社外での活用例
- 取引先との仕様書共有
取引先と仕様書をやり取りする際、メールではファイルサイズやセキュリティの問題が生じることがあります。オンラインストレージを利用してアクセス権限付き(特定のユーザーだけが閲覧や編集できるように設定可能)リンクを共有することで、これらの問題を解消できます。また、共有リンクに有効期限を設定することで、さらに安全性を高められます。
- 迅速なやり取りで意思決定をスピードアップ
取引先とのやり取りでは、緊急の連絡や確認が必要な場面が多々あります。その際、チャットツールとツール内ファイル共有機能を活用すると、リアルタイムでの情報共有が可能です。たとえば、急な仕様変更が発生した場合、チャットで設計図や資料を即座に送付し、コメントを受け取ることで、メールよりもスピーディに対応できます。また、過去のやり取りが履歴として残るため、必要な情報を振り返るのも簡単です。これにより、意思決定の迅速化や取引先との連携強化が図れます。
導入手順
オンラインサービスの導入は、目的や利用範囲によって適切なツールを選ぶことが重要です。以下に、オンラインストレージ、ファイル転送サービス、チャットツールの各カテゴリごとの導入ステップを説明します。
無料プランやデモ版を試す
最初はGoogleドライブやSlackの無料プラン、Bizストレージファイルシェアのデモ版などを試用してみましょう。それぞれのツールの操作性や機能を実際に体験し、チームの業務に適しているかを確認します。特に、利用シーンに合ったツールを選ぶことが大切です。
社内運用で使い方に慣れる
導入するツールが決まったら、小規模なプロジェクトやチームでテスト運用を行いましょう。たとえば、オンラインストレージを使って図面を共有する、チャットツールで日報や進捗管理を行う、ファイル転送サービスで大容量データを取引先に送信するなど、具体的なケースで試します。この段階で、社員全体がツールの使い方に慣れることが重要です。
取引先や外部パートナーとのやり取りを始める
社内での運用が安定したら、取引先や外部パートナーとのやり取りに活用を広げます。取引先に利用方法を説明し、共通のオンラインストレージやファイル転送サービスを使うことで、業務効率が向上します。また、セキュリティ対策や利便性を強調してツールの活用を促進しましょう。
効果的な運用のポイント
トレーニングとサポート
社員や取引先に対してツールの使い方を分かりやすく説明するトレーニングを実施します。特にオンラインストレージのアクセス権限や、ファイル転送サービスの安全な使い方について重点的に説明しましょう。
ポリシーの策定
ファイルの命名規則やフォルダ構成、共有ルールなど、統一されたポリシーを設けることで、運用がスムーズになります。
これらの手順と運用ポイントを活用することで、オンラインサービスを最大限に活用し、社内外でのファイル共有を効率化できます。ツールを適切に選択し、業務全体の生産性向上を目指しましょう。
まとめ:中小製造業にはオンラインストレージがおすすめ
これまで紹介したさまざまなツールの中でも、特に中小製造業におすすめなのはオンラインストレージです。導入がお手軽でコストも比較的安く、ファイル共有を効率化しながらセキュリティを強化できるオンラインストレージは、業務の効率化と安全性向上に大きく貢献します。
オンラインストレージの主なメリット
利便性
インターネット接続があれば、どこからでもアクセス可能。リモートワークや外出先での業務にもスムーズに対応できます。
セキュリティの強化
アクセス権限の設定やデータ暗号化機能により、情報漏洩のリスクを低減します。さらに、自動バックアップ機能で災害時やトラブル時にも迅速な復旧が可能です。
コストパフォーマンス
無料プランや手頃な価格のプランが充実しており、初期投資を抑えながら柔軟に導入できます。
一元管理
バージョン管理やアクセスログ機能により、データの追跡や管理が効率化し、業務の透明性が向上します。
他のツールとの組み合わせも視野に
ファイル転送サービスやチャットツールといった他のツールも、オンラインストレージと組み合わせることで、さらに効率的で柔軟な業務体制を構築できます。一時的なファイル共有やリアルタイムな情報交換にはこれらのツールが適しています。
導入の一歩を踏み出そう
まずは無料プランを試してみることで、オンラインストレージの利便性と効果を実感してください。他のツールと併用することで、ファイル共有の課題を解決しつつ、安全かつ効率的な業務運用を実現できます。
オンラインストレージを中心としたツール活用で、業務効率化とセキュリティ向上を目指しましょう!
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